2016年09月
- アワビの養殖に適した品種(09/29)
- アワビは自身の糞を食べて、自滅する(09/27)
- そもそも、アワビって養殖できるのか?(09/24)
- アワビは水の流れる場所が好き(09/24)
- 人間でもアワビでも、食べすぎは良くない(09/23)
- アワビの餌の転換率の実際(09/22)
- アワビの稚貝の性質(09/20)
アワビの養殖に適した品種
2016.09.29(22:43)

エゾアワビの成長状況
アワビの養殖に適した品種は、ずばりエゾアワビです。
天然のアワビと言えば、クロアワビが王様ですが、こちらは養殖には向きません。
なぜなら病気にかかりやすいからです。
その病気は、筋萎縮症。
4月下旬~7月に発症しやすく、腹足(足の部分)が痩せ、病気にかかった稚貝の約半分が死亡します。最悪のケースでは全滅します。
なので、一般企業は恐ろしくて手が出せません。
公共機関や、国から補助金を貰って余裕のある企業などが挑戦している状況です。
アワビ養殖の王道は、エゾアワビ。
エゾアワビとクロアワビの交配品種等の開発も進んでいますが、しばらくはエゾアワビの天下でしょう。
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アワビは自身の糞を食べて、自滅する
2016.09.27(23:15)
アワビ養殖において重要なことの一つに、排水・糞・餌カスの掃除方法の確立があります。それは、アワビが自身(もしくは仲間)の糞を食べて死ぬからです。
なので、程よいタイミングで糞を掃除し、排水をしなければいけません。
陸上養殖の場合、これらの処理が簡易に出来る施設設計にしないと、未来永劫同じ作業で多大な時間や、労力を取られることになります。
海面養殖でも、知らず知らずの内に、アワビが死ぬ原因になっているかもしれません。
そもそも、アワビって養殖できるのか?
2016.09.24(16:26)

和丸水産の、アワビ陸上養殖水槽
アワビ養殖は大変難しいですが、できます。
方法は大きく2つあります。
①海面養殖
・カゴを海水中に吊るし、その中で育てるもの
・湾内の漁礁等に放流し、育てるもの
[長所]
・開設費が安価
・運営費が安価
[短所]
・気候や赤潮、タコ等の外敵に大きく左右され、全滅することもある。
・アワビを目視確認出来る頻度が減るため、変化に気付かない場合がある。
②陸上養殖
・陸上で作成した施設にアワビを入れ、その中で育てるもの
[長所]
・気候や赤潮、タコ等の外敵に左右されにくく、いつでも出荷できる。
・気軽にいつでもアワビの様子を観察でき、適切な対処ができる。
[短所]
・手法にもよるが、開設費・維持費が非常に高価
一般的な養殖アワビでは、その大きさが8~10cmになると売られます。
3cm程度の稚貝を購入して育てたとすると、最低でも販売に至るまでに2~3年かかります。
すなわち、その期間に何か他の収入源がないと1円にもなりません。
どんな養殖方法にしろ、病気になって全滅することもありますので、
それらのリスクを考慮した上で、事業計画を立てないといけません。
ほとんどの場合、サラリーマンをしていた方がましです。
もと
アワビは水の流れる場所が好き
2016.09.24(09:31)

隅角部に集まるアワビたち
アワビが好きな場所があります。
①隅角部
②暗い所
③狭い所
④水流のある所
この記事では、④について記入します。
アワビは、水流のある所が大好きです。
養殖施設によっては、アワビが驚くほど偏ります。
水の噴出し口が一つしかない、水がよどんだ箇所がある等。
アワビは新鮮な水・酸素を求め団子状態になる。
↓
餌が行き渡らなくなる。
↓
アワビの成長が悪くなる。
と、悪循環に陥ります。
一旦施設を作ると修正が難しい場合が多いので、
これらを踏まえた施設設計を熟考することが重要です。
大手の名のある会社の養殖施設をいくつも見ましたが、団子状態のアワビしか見ませんでしたね。
それほど均一飼育は難しいということです。
もと
人間でもアワビでも、食べすぎは良くない
2016.09.23(00:56)

アワビの餌カスの掃除中
人間でもアワビでも、食べすぎはよくありません。
アワビの場合、食べ過ぎると消化不良を起こし、死にます。
満腹になって死ねるとは羨ましい、とも言えますが、アワビ養殖では死活問題です。
程よい量を、程よいタイミングでアワビに上げられるようにするのが、養殖者の務めです。
養殖水槽の水質・清掃速度等で、適量・適時が大きく変わることがアワビ養殖を難しくさせています。
その分、皆独自のノウハウを持っていますけどね。
養殖施設の設計がどれほど重要か、ということです。
もと
アワビの餌の転換率の実際
2016.09.22(16:46)

アワビ食事中~♪ 美味しい餌だね~
アワビが餌を食べて、それがどれだけ成長につながるかを「餌の転換率」と言います。
天然の餌(コンブ、アラメ、カジメ)よりも、それらをバランスよく配合した、配合飼料の方が転換率は高くなりアワビが喜びます。
学者さんはこの数字を重視されるのですが、アワビの稚貝の性質 の記事の様に、いくら餌を上げても商品にならないアワビがいますので、それらの対策を取れないまま転換率を追い求めた所で何の意味もありません。
対策とはすなわち、「成長不良貝を見極められるようになり、出来るだけ早い時期に廃棄する」ということになります。
これらの眼力は学者さんには備わっていませんので、所詮絵に描いた数字にしかなっていないのが実情です。
和丸水産の職員の1人は、この技を習得しています。
アワビ養殖業者が生き残る為に、覚えなければならない技の一つです。
もと
アワビの稚貝の性質
2016.09.20(12:59)

成長中のアワビ稚貝
アワビも人間と同じで、遺伝的な特性があります。
和丸水産では、日本各地(愛媛、九州、東北)で稚貝をこれまで購入してきましたが、どこも傾向はほぼ同じです。
具体的には、下記の様になります。
①成長が早いエリートアワビ 5%
②標準的な成長率(2~4mm/1ヶ月)のアワビ 45%
③低レベルな成長率(0~1mm/1ヶ月)のアワビ 50%
上記の③は、廃棄レベルのアワビです。
40~50mm程度で成長が止まってしまいます。
ですので残念ながら、③のアワビであると分かった段階で廃棄する必要があります。
餌と飼育場所、飼育する労力や電力が無駄となり、その他①②の良質のアワビの成育場所を圧迫してしまうからです。
③のアワビは小さすぎて商品になりませんので、本当に残念ですが廃棄しています。
この見極めが出来るかどうかが、アワビ養殖技術者の重要な一つの技になります。
これらから、斃死率は別にして出荷したいアワビの数量に対して、2倍の稚貝を購入し育てる必要があります。
そうすると徐々にアワビの個体数が減ってきて、適量になります。
これを間違えると経営が破綻します。
アワビ稚貝の裏話でした。
もと